隣り合わせ
部屋の前に居たのは、2つ年上の兄貴だった。


「帰ってきたら、顔ぐらい出せよ!」


兄貴は、大学生活を満喫している。


黒くなった顔を見て夏を楽しんだ感じが伺える。


「なんかあったか?」


部屋にある椅子に座り、ニヤニヤしながら質問する。

亮に何となく性格が似ている。


「別に…。」


シャーペンを指で回しながら何もない振りをする。


「お袋が、急にお前が帰ってくるって言ってたからさ!」


そして。

窓に写る景色を見ながら、兄貴は言った。


「あんまり無理するな!」

痩せたなぁと言いながら、俺の肩をポンと叩いた。


「無理してねーよ!」


ただ…。


疲れただけだよ。


そう言えば楽なのに。


言えなかった。


兄貴は、サークル三昧で、忙しいと散々話して。


「女ができたんだ!」


照れながら言って、部屋から出て行った。
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