隣り合わせ
助手席には、甘い香水の匂いがした。

多分、兄貴の女の香だろう。


ゆっくりめのテンポな曲が車内に響く。


先に口を開いたのは兄貴だった。


「照れるな?」


何年ぶりだろうか?


兄弟同士で出かけるって。

「…だな?」


俺は、外の景色を見ながら頷いた。


久しぶりの町並み。

幼少時代から変わらない景色に懐かしむ俺。

好きだった町。

いつから?

窮屈になってしまったんだろう…。



「敦…?女出来ただろ?」


「…。」


何故か、動揺を隠せない。


「あれか?振られたとか。」



「ちげーよ!」



赤信号で止まって、タバコに火を点ける兄貴。



「好きな女いるんだろ?」


タバコの煙りが、目に染みた。



「あぁ…。」



やっぱりなぁと、ぶつぶつ言いながら、ガソリンスタンドに入った。


威勢のいいスタッフが、元気よく対応していった。


テンション高いし。
< 123 / 203 >

この作品をシェア

pagetop