◇君に奇跡を世界に雨を◇
世界に雨を

柔らかな霧雨

 
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窓の外から聞こえてくる部活動をする生徒達の賑やかな声。
私は真っ白な病室のベッド上で、ギブスで固定された自分の右足を睨んでいた。

どうせ入院するんなら、もっと遠い病院がよかった。
学校のすぐそばにある病院。
グラウンドの喧騒まで聞こえてくる病室で、ひとり安静にしてるなんて。
むなしすぎる。
バカみたい。

私だってこんなケガしてなかったら、あの中で一緒に走っていたのに。
大会にだって、出られたのに。


来週末のインターハイ地区予選。

その日のためにすべてをかけて練習してきた。
県大会へは余裕で進めるはずだった。
うまくいけば、その先だって……。

なのに、
後悔してもしょうがないけど、やっぱりどうしても考えてしまう。


あの時

雨が降ってなければ。
傘をさしたまま自転車に乗らなければ。
あの灰色の猫が飛び出してこなければ。


自転車で転んで、右足首を骨折なんて事にはならなかったのに。

私はグラウンドから聞こえる陸上部の練習する声から逃げるように、耳を塞いで布団の中に潜りこんだ。



ぽつり、ぽつりと、雨の降りだす音が聞こえる。

――雨はキライ。


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