◇君に奇跡を世界に雨を◇
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しと、しと、しと。
静かに続く雨音に、ふ、と目を覚ますと辺りは真っ暗だった。
驚いて時計を確認すると、夜中の1時。
……しまった、寝すぎた。
午後からふて寝をして、看護師さんに起こされて夕食を二口三口食べたあと、またすぐに布団に潜り込んでうつらうつらしているうちに、こんな時間に目をさましてしまった。
変な時間からふて寝したから、目が冴えて寝れそうにない。
とりあえずトイレにでもいこうかな、と、静かにベッドを抜け出し松葉杖をついて病室を出た。
夜の病院の廊下は、どうしてこんなに静かなんだろう。
廊下の両側に並ぶ病室には、たくさんの人がいて息をしているはずなのに。
聞こえるのは空調の低く唸る音と、廊下に響く自分の足音。
まるで世界にひとりきりになってしまったように、人の気配がない。
ひやり。
冷たい夜の空気に少し怖くなる。
廊下の突き当たり、自動販売機とソファの置いてあるスペースまで来て、なんとなく窓の外を眺めた。