◇君に奇跡を世界に雨を◇
 


ふわりと、まるで喉を鳴らす猫のような柔らかいユウの笑顔。

「雨がありがとうって言ってたよ。ソーセージ、美味しかったって」

ユウは窓の外を見下ろし、昼間、私が雨に魚肉ソーセージをあげていた辺りを指して笑う。

「見てたの?」

見ていたなら、声をかけてくれればいいのに。

「見てなかったけど、雨から聞いた。あと、ごめんねって謝ってた。ボクが道に飛び出したからあかりちゃんがケガしちゃったんだねって」

「……どうして?」

どうして、そんなこと、ユウが知っているの?

私の戸惑いに、ユウは首を傾げて微笑んだ。

「悲しまなくても、大丈夫」

優しく泣くこどもをあやすようなユウの声。

「あかりちゃん、大丈夫だよ。心配しなくてもまた前みたいに走れるようになるよ。だって……」

どうしてそんなことまで、私の心の中の不安まで、知っているの?

「だって、世界は奇跡で溢れてるから」

まるで当たり前のことのように、ユウは奇跡を語る。


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