◇君に奇跡を世界に雨を◇
「いや、その人酔っ払ってたんだよね? ただの酔っ払いの戯言じゃない」
「そう思うでしょ? でも、違った。その宝くじは……」
「まさか、……当たってたの?」
ユウにつられて声をひそめてたずねた私に満足そうに頷いて、指を一本、ぴんと立てた。
「そう、当たってたんだ。……3等、1000万円」
「なぁんだ。1等じゃないのね。3等って微妙」
私があからさまにガッカリして肩を落とすと、ユウも窓枠に寄りかかって笑った。
「1等じゃないのがニクイよね。でもすごくない? 道を歩いてたら1000万円の宝くじが一枚飛んで来たんだよ? 38万分の1の確率の当たりくじ」
確かに、すごい。
その出来事を奇跡と言うのは大袈裟ではないのかもしれない。
「そして、奇跡の男は悟ったんだって。『世界は奇跡で溢れてる。奇跡の起きる確率は、ただ、目の前の奇跡に気づくか気づかないかの確率なんだ』って」