◇君に奇跡を世界に雨を◇

風に飛ばされ

 




「みんなあかりのこと心配してるよ」

「地区予選、あかりの分も頑張るからね。絶対県に進むからね」

「その頃にはきっと退院できてるんだよね? よかったら応援に来てよ」

「そうそう! あかりが応援に来てくれたらみんな喜ぶし心強いよ」

ベッドの脇で明るく話しかける友達の声が、なんだか空々しく感じる。
せっかくお見舞いに来てくれたのに。
素直に喜べないひねくれた私。

「……応援には、行かないかな。退院はできると思うけど、まだギブス外せないから外出するの大変だし」

ベッドの上に投げ出した右足のギブスをみつめながらつぶやくと、ふたりとも本当に残念そうに肩を落とした。

「そっかぁ。でも、そうだよね。今は無理しないでケガを治すのが一番大事だもんね」

ごめんね。
大会になんて行っても、陸部のみんなを素直に応援なんて出来る気がしないの。
トラックを走るみんなを、羨んで妬んでしまいそうなの。

「あかり、早く治して復帰してよ! あかりがいないと寂しいんだから。また一緒に走ろうね」

「またお見舞いくるから元気だしてね」

私を元気づけようとしてくれるふたりに、作り笑いで首を横に振った。


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