◇君に奇跡を世界に雨を◇
あんまり笑うからなんだかバカにされたみたいで恥ずかしくて、私はユウを睨みながらソファに座る。
「4階行ってみた? いい眺めだったでしょ」
向かいのソファに座ってにっこりと笑う。
「みんな、気持ち良さそうに走ってたでしょ?」
「……うん」
素直に頷く私に、嬉しそうにユウは目を細めた。
「あかりちゃんは誰よりも綺麗に気持ちよさそうに走ってたよ。ぼく、いつもあの窓からあかりちゃんが走るのを見てた」
そんな風に真っ直ぐにみつめられるとドキドキして、なんだか居心地が悪くなる。
「だから、走るのをやめようなんて思わないでね。ぼくはきみが走る姿が大好きだったんだ」
ユウの言葉が過去形なとこに気づいて、ずきり、と胸が痛んだ。
「……ねぇ、ユウ。どうしてユウは夜しか会えないの?」
今日、昼間病棟を回ってユウを探してみたけど、ユウの病室を見つけられなかった。
もしかして、なんて疑問が胸の中で大きくなる。
じっと、ユウの瞳をみつめると、困ったように笑った。