◇君に奇跡を世界に雨を◇
 
「きっと今頃天国で3万3332枚の宝くじを、一生懸命調べてるよ」

天井を仰ぐユウにつられて一緒になって上を見ると、ユウの言った数字の中途半端さが引っかかった。

「あれ? 一枚たりないよ。3万3333枚でしょ?」

「あかりちゃん、よく気付いたね。最後の一枚はぼくにくれたんだ」

天井を仰いだまま話すユウの白い喉がとても綺麗に見えた。


「『奇跡を見逃さないように目を見開いていれば、きっとお前にも奇跡が起こる。だから、諦めるな』。その人はぼくに一枚の宝くじを渡してから、そう言って笑って逝った」


ユウはゆっくりと視線を天井から私へと移して、優しく微笑んだ。

「かっこいい人でしょう?」

「かっこよすぎる人だね」

顔を見合わせ笑ったけれど、なんだかとても悲しかった。





 


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