◇君に奇跡を世界に雨を◇
茜色に染まった空を、何か白くて大きな物がゆっくりと横切っていく。
「ありがとう、あかりちゃん。きみに出会えて、ぼくは幸せだった」
そう言って微笑むユウの猫みたいに柔らかい表情さえもう分からないほどに、ユウの体は消えかかっていた。
神様
神様
お願いだから…………。
ユウはゆっくりと窓の外を見ると、小さく微笑んだ。
そこには空に浮かぶ白い大きな船があった。
まるでノアの方舟のような。
「さようなら、あかりちゃん」
消えていくユウの体。
燃え尽きる太陽に照らされた美しい病室の中。
私は、声を上げて泣いた。
「神様の、バカヤロウ……っ!」