博士とわたしのクローバー

ついて行くと子ねこが機械の中に入っていた。
「あ、あの・・・」
「もう大丈夫だよ。」
少女はぱあっと顔を上げた。
「あの子ねこは長いあいだ雨に打たれていたからかなり衰弱していた。あと少し遅かったら危険だった。」
博士はお茶を入れながら聞いた。
「名前を教えてくれるかい?」
「はい。私の名前は雪・・・」
少女は言いかけて、
「あ・・・わ、私の名前は陽葉 優花です。」
「優花さんか、良い名前だ。」
「あ、ありがとうございます・・・」、
優花は少し戸惑った。
「じゃあ優花さん。事情を教えてくれるかい。」
「はい。あの子ねこを見つけたのは用があって家を出た帰り道でした。雨が降ってきたので急いで家に帰ろうと走ったら猫の鳴き声が聞こえて、足を止めてしたを見たらあの子ねこがいて。ダンボール箱の中でうずくまってる姿を見たらいてもたってもいられなくなって・・・」
優花はお茶を飲みながら話した。
「でも、それなら動物病院に行けば・・・」
博士が聞いてきたので戸惑ってしまった。
「あ・・・お金がなかったんです。あの、お金は後日払います・・・」
そして優花は渋りながら続けた。
「それと・・・私が住んでいるアパートはペットが禁止で・・・」
優花はうつむいた。すると博士が、
「お金はいらないよ。それより、僕がこの子を引き取ろう。」
「・・・え?」
予想外の返事に驚いた。博士は続けて、
「この子ねこは三毛猫だ。しかも、オスの。」
「え!」
優花はびっくりした。三毛猫のオスは滅多に生まれないと聞いたことがあるからだ。
「この研究所の奥には広い庭があってそこで生き物を飼育、研究している。そこにはうさぎや犬、猫や馬などを飼っている。そこでならあの子ねこも育てられるだろう。」
「でも、私が拾ってきた猫なのに・・・いいんですか?」
「ああ。」
優花はほっとしてため息をついた。
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