秘密のカレはV(ヴィジュアル)系
「かおり…何度も悪いんだけど、式場のこと…
いいかげん決めなきゃ、もう予約が……」

「……式場なんて予約したって意味ないわ。」

「意味ないって…どういうこと?」

「だから……私は、あなたとは結婚なんてしないんだから…」



瑠威が一瞬目を見開いて、そのまま凍りついたように押し黙った。
いやな沈黙が流れる…
ついに私は言ってしまった。
自ら、死刑の宣告を下したのだ。



「どういうこと?結婚しないって…」

「どうもこうもないわ。
その通りの意味よ。
私はあなたとは結婚しない。」

心臓が飛び出しそうになるのを懸命に堪え、無理して作った涼しい顔でそう言った。



「全く意味がわからない!
もっとわかりやすく話してくれ!」

瑠威が怒ってる。
滅多に見せることのない険しい視線で私を睨み付けていた。



「瑠威…私もう疲れたのよ。
もう良いでしょう?
私を開放して…」

「疲れた?開放?
まるでわからない。」

「飲み込みが悪いのね…これだからお子ちゃまはいやなのよ。
長い間あなたと付き合ってきたけど、あなたの相手をすることにもう疲れたの。
幸い、あなたもメジャーデビューの話が来てることだし、お子ちゃまはお子ちゃまらしくバンドでもやってりゃあ良いのよ。
あなたには、私を満足させられない。」

涙が出そうだった。
鼻の奥がつんと痛くなって、泣き出してしまいそうだった。
だけど、今、泣いちゃおしまい。
私は、こみ上げる涙を懸命に抑え込んだ。
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