秘密のカレはＶ(ヴィジュアル)系

「そうだったのか…」



藤堂という男は、恋人役にするために騙したのだと言う。



「本当に私って最低よね…
自分のことで、もう頭がいっぱいで、他人を利用することにもそれほど心が痛まなかった…」

「自分のことじゃないだろ…
俺のため…だよな。
俺のために、かおりはそんなことまでしてくれたんだ…」

「私…あなたやシュバルツのメンバーの邪魔をしたくなかっただけなの。
あなた達の夢を叶えたくて…ただそれだけで…」

「かおり……」

俺はかおりを抱き締めていた。
かおりは嘘や人を騙したり、傷つけたりすることが嫌いな人間だ。
なのに、あんなことまでやってくれたなんて…
それに、自分のことを俺にとっての重荷みたいに感じていたなんて、酷くショックだった。



「かおり…もう二度とあんなことは考えないでくれよな。」

「……ええ。」

「俺は絶対に、お前と離れないから…」

自然に目と目が絡み合い、俺達は身体を寄せそっと口づけた。
とても安心出来る柔らかな唇だ…


信じて良かった…自分の感覚を…
信じることが出来て、本当に良かった…



そうでなければ、こうしてかおりの柔らかな唇を味わうことはもう出来なかったかもしれない。



俺は、かおりの身体をきつく抱きしめた。