恋は天使の寝息のあとに
どっちでもいいとか、好きにしろとか、そんなことを言われるんだろうなと思っていた。
さっさと決めろと怒られるかもしれない。
きっと彼は、こんなこと早く終わらせて帰りたいに決まってる。

が、私の予想に反して
「白」恭弥は即答した。

「どうして?」

「お前は明るい色の方が、似合うだろ」

恭弥はポケットに手を突っ込みながら、飄々と答える。
相変わらずの無表情。

それなのになんだか私は嬉しくなってきてしまって、ほんわりと頬が暖かくなった。
今まで冷たく扱われてきた分、ほんの少し私を見てくれただけで、こんなにも嬉しいと感じてしまう。


一緒に悩んでくれる人ができたとあって、俄然張り合いがでてきた。
私が意見を求めてみると、恭弥は意外にも真剣に取り合ってくれることに気がついた。

『その色、子どもっぽくねぇ?』

『それ、お前には地味だ』

『どっちも似合ってるよ。好きな方にしろ』

彼は曖昧なお世辞なんか言わない。
人の顔色なんてうかがわず、白か黒、はっきりと感じたままに断言する。
それが妙に気持ちよかった。
こんなにも信頼できる言葉はない。

気がつくと、気まずいと思っていた二人きりに心地良さを感じていた。
いつの間にか、二人の間には笑顔さえ生まれるようになっていた。
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