恋は天使の寝息のあとに
そんな私を見た恭弥が、呆れた声を上げた。

「どれだけ後ろ気にしてんだよ、ちゃんとついてってるって」

そう言って私の頭の上に、ぼすんと手のひらを乗せる。

「何なら心菜みたいに、お手々繋いでてやりましょーか?」

「け、結構です!」

バカにされて頬を膨らませた私だったが、頭の上にある大きな手のひらが温かくて、怒ることすらままならなかった。
心菜はいつも、こんなぬくもりに包まれているんだ。
なんだか少し、羨ましいと思った。


羽を伸ばしてこいと言われたからといって、あまり由利亜さんを待たせる訳にはいかない。
私は自分の好きなテイストのショップに的を絞って、店内を急ぎ足で物色した。

服を見ている間、黙って私のうしろをついてくる恭弥。
興味なさそうにぼんやりとあたりを眺めている。

私の買い物に付き合って、恭弥、つまんないだろうな……

申し訳なく思いながら、彼の横顔を見つめていたら、ふと彼がこちらを向いた。
意図せずバチリと視線が重なって、思わず持っていた服を握り締める。

「何?」
「え、えっと……」

恭弥の冷めた視線は度々私の思考を停止させる。
おたおたとしながら、今しがた彼を見つめていた理由を必死に探した。

「服、どっちがいいか聞こうと思って」
「どれ?」

決めかねていた色違いの服を指差しながら「……紺と白、どっちがいい?」そんなことを聞いてみた。
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