As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
翌朝、目が覚めたのは日が登って1時間経ったくらいのことだった。
「ふあ………ん?」
違和感。
感触の違う掛け布団、色も違う。
こんなところに、こんな大きな窓あっただろうか。
天体望遠鏡……悠太の?
ん?ここは悠太の家?
で、今私が寝転んでいるのは悠太の……ベッド……?
ふと、昨日のことがフラッシュバックした。
皆でパーティーして、そのあと悠太に連れられて悠太の家に来て、プレゼント交換して、嬉しくて嬉しくて泣きそうになって……
それからどうしたのか、肝心なところで意識は途切れていたようだ。
「んん……もう、朝……?」
眠気全開の気怠げな声が耳元で聞こえる。
仰向けだった体を右に向けると、視界いっぱいに幼馴染みの端麗な顔。
「お、おは……よう……?」
少々挙動不審な挨拶になってしまった。
その理由は、言わなくてもわかるだろう。
「あ……も、もう起きてたんだ……」
悠太も、私が既に起きていたことに驚き、喋りがぎこちない。
悠太のベッドは決して大きいわけではない。
成長期……成長しすぎた悠太一人でも足がはみ出そうなくらいなのに、そこに私が加わったことでより一人のスペースが狭い状態に。
故に、向かい合うお互いの鼻と鼻がくっついてしまいそうな位の至近距離。
いくら相手が幼馴染みだとはいえ、こんな状況では、意識してしまう。
どのくらい時間が経ったかは分からないが、しばらくの間、お互いを見つめ合い1歩も動かない状態が続き、最後には私の言葉で視線は逸れた。
「……シャワーをお借りしたいのだが、良いでござるかね」
なんとも意味不明な言葉だ。
自分でも、ツッコミどころあり過ぎて言った後で後悔した。
「い、いいでござるよ」
それに乗った悠太も、あまり思考回路が正常に生きていない模様。
二人してむくりと起き上がると、私はシャワーを浴びに、まるで無機質なロボットのように歩いて向かった。
「………不自然だ」
シャワーに当たりながら、そう思った。
ようやく目が覚めた気がした。
いつもらしからぬ自分に、少々の違和感。
きっと、朝から心臓に悪いことがあったからだ。
いや、心臓に悪いことなんて、昨日もあったじゃないか。
服を脱ぐ時、首元には確かにネックレスがあって、鏡で初めて見るそれにしばらく見入ってしまっていた。
アンティーク調の錠デザイン。
学校につけて行ったら、バレちゃうかな。
ああいう貰ったアクセサリーって、いつも身に着けていたいものだ。
汐音さんたちから貰った指輪だって……それは流石にまずいかな。
「千代、バスタオルここに置いておくよ」
そうだった、手ぶらで来てしまったんだった。
悠太が気づいて持ってきてくれてよかった。
「ありがとう」
シャワーから出ることには、心も落ち着き、自然と話せるようになっていた。
「母さんも父さんも、まだ寝てるみたい」
パジャマから着替えた悠太。
髪にはまだ寝癖があるけど。
「私が朝ごはん作ろうか?」
「ううん、いいよ。僕が作るから」
悠太って、料理出来たっけ……
「………」
「作れるのかって顔してる。僕だって朝ごはんくらい作れるよ。料理番組にゲストで呼ばれたことだってあるんだよ?あ、トーストに目玉焼き載せたやつでいい?」
悠太にはお見通しだった。
「うん」
パンを2枚トースターにセットすると、卵を2つ割り油を引き火をつけたフライパンに落とした。
そして、少量の水を入れると蓋をして少し待つ。
慣れた手つきに、少し感動しそうだ。
「へへん、どう?」
「……凄いね」
「これくらいお手の物だよ。もっと凄いのだって作れちゃうんだから!……作ったことないけど!」
「じゃあ、今度夕飯も作ってもらっちゃおうかな」
「任せて!……っと、そろそろかな……」
目玉焼きが形になってきた頃に、丁度トースターもチンと音を鳴らし、お皿に盛り付けると、目の前のテーブルの上に美味しそうな香りが漂った。