As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
【東雲紗代里はビッチ!?】
大きく週刊誌に書かれた文字。
ニュース番組でも、報じられた。
東雲(しののめ)というのは、ママの旧姓である。
そして、ママは芸能界の人間だった。
女優としても、モデルとしても、幅広く活躍していた。
私が6歳までの話だ。
テレビに映るママは、いつもキラキラと輝いていて、ファンも多かった。
そんなママを、私は誇りに思っていた。
週刊誌、その内容は正しいときもあれば、滅茶苦茶な嘘を書かれる時もある。
ママは、滅茶苦茶な嘘を書かれた。
既婚済みのクセして、複数の男性と付き合っている、卑劣なビッチだと。
ママはそんな人じゃない。
ママはパパしか愛していない。
それを一番わかってるのは、ずっと傍で見てきた私だ。
悲しかった。
テレビでママが悪く言われるのが。
でも、一度世間に広まってしまったら、それを消すのは早々できない。
証拠写真の様なものまで載せられてしまったんだもん。
でも、それは仕事でお世話になった監督さんやスタッフさんで、決して付き合ってなんかいない。
たまたま2人になった所を撮られてしまっただけだ。
たった一つの誤解から、ママに仕事のオファーは来なくなった。
記者会見で誤解だとはっきり伝えた。
けれど、誰かが次々に嘘の証拠を提示した。
それが真実なんだと広まった。
連日、私達の家に記者が押し寄せた。
一緒にいた私にまでマイクが向けられた。
光るフラッシュと、記者の大きな影、声が、恐怖を掻き立てた。
そしてママは、芸能界から姿を消すことになった。
あんな記事さえ無ければ、ママは今も芸能界を続けていたのかもしれない。
あの大きな舞台で輝き続けられたかもしれない。
ママは、「いいのよ、これで」と言う。
芸能界は怖い。
それを知ってしまった。
だから、嫌なの。
ただ……私が弱いだけなのかもしれない。
それだけなのかもしれない。
改めて考えると、大した理由じゃないのかもしれない。
怖いんだ、怖がったいるだけなんだ。