As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
「……カット!」
「良かったよ!流石だ。初めてとは思えない……」
サングラスをかけた監督が、嬉しげにそう言った。
「これでも、初めてなんですよ」
「こりゃあ、視聴率も上がるぞ……!」
「だといいですね」
「千代」
「流くん」
「俺の方が圧倒されそうになった」
「ううん、流くんこそ凄いよ」
「ね、僕は?」
「悠太も、本当に凄い。ビックリしちゃった」
「へへ。千代には負けるけどね」
「いやぁ、3人が一緒にいるところ、本当に幼なじみみたいだね」
「そう見えたなら、嬉しいです。俺達、事務所の関係で話すことも多いですから、結構仲は良いと思いますよ」
流くんは、慣れた様子で話した。
私が演じる美琴(みこと)と、悠太が演じる奏(かなで)と、流くんが演じる玲(れい)の3人は、幼なじみという設定だ。
家が古くから呉服店を営み、その一人娘の美琴。
才色兼備であり、学校では高嶺の花と言われている。
しかし、本人はそう言われていることに不満を持っている。
「そんなんじゃない。私は普通よ」と。
そして、小さい頃から美琴の傍にいた、クールな玲と、ふわっとした性格の奏。
2人は、美琴に恋心を抱いている。
そんな3人の結末までを描いた物語。
まだ、私達にも結末は分からない。
美琴が、奏とくっつくのか、玲とくっつくのか。
はたまた、どちらともくっつかないのか。
「監督、このドラマの結末は決まっているんですか?」
「……ああ……決まっていないよ」
訝しげな表情をして出した答えはそれだ。
「え?」
決まっていないなんて……大丈夫なんだろうか。
「冗談だよ。一応決まっているさ。でも、今後の君たちの演技次第で、客法を書き換えることはありうる」
真剣な眼差しは、本気だ。
私達の演技が見られている。
「君たちはまだ若い。いくら役だとはいえ、プライベートでの感情が演技に影響されることがある。私は、それを見逃さないからね」