As sweet honey. ー蜂蜜のように甘いー
「拓巳くん、僕の頭撫でるの止めてくれない?」
「えー、だってなんか『弟』みたいでつい。」
「強調しなくていいから」
悠太はなんだか、ちょっぴり不機嫌だ。
「てかさー、ずっと気になってたんだけど、お前ら2人で居てよく疑われたりしないな。付き合ってるのかとか、どういう関係だーってさ?」
焼きそばパンを、片手に持つ滝沢さんがそういう。
確かに、ここまでも2人で来たわけだし。
「あーそれは、僕らが図書委員だからだよ」
この間の委員会決めで、私と悠太は図書委員になったのだ。
1年の頃も2人とも同じクラスで、図書委員をやっていたから、その流れで今年も図書委員に。
「図書委員だから?でも普通委員会が一緒だからっていつも一緒にいる訳じゃ無いだろ」
「私達は『旧図書室清掃担当』なの。クラス数が多いから、月曜日から金曜日までの図書担当を決めても余っちゃうから、この担当が追加されたの」
「その担当作ったの、僕なんだけどねー」
去年、まだ高校に入りたての委員会で悠太が『あの、旧図書室清掃担当なんて作ったらどうですか?』なんて言うもんで、アイドルパワーというやつなのかは分からないけど、すんなり承諾された。
「なるほどね。だから、こうして毎日昼休みは『旧図書室清掃』という名目でこの図書室に来れるって訳なんだね」
「そーゆーこと。んで、教室では席の近いもの同士仲良くしましょうねー、的なノリでやってる。これ、意外と疑われないんだよね」
「お前らやるな」
「俺なんて、二年以上ずっとこんな眼鏡かけたモブやってるのにー」
そう言いながら、あの丸メガネを目に当てる。
「悠太は良くても、拓巳が通常の姿で居ると大変だからな」
「隼人くん、それって僕にアイドルオーラが無いから大丈夫だって言いたいの?」
「いやいや、そういうんじゃなくてさ。悠太は『見てるだけで癒しっ!』て感じで遠くから見守るタイプのファンが多いけど、拓巳の場合は『拓巳様!是非お近づきに!』って感じで群がるファンが多いんだよ」
「学校でまでそれは勘弁だからねぇ。でもまぁ、モブはモブなりに楽しんでるよ。目立つことは無いし」
アイドルって、テレビや雑誌で顔が知られてる分、プライベートにも気をつけないといけない。
その大変さは、小さい頃から分かっていた。
『千代、撮られたらいけないから、ちゃんと車の中で大人しくしておくのよ?』
あの時のママの言葉が脳裏に蘇る。
サングラス姿のお洒落な服を身にまとったママ。