あなたにキスの花束を
司さんはポケットに繋いで収めていた私の手を出すと、それをようやく解いてくれた。
「ここでね、彼女に贈る花を選ぶのを、君に手伝って欲しいんだ」
彼の思わぬリクエストに、私はまたぽかん顔になる。
もう今夜はどれだけ彼に驚かされているんだろう。
「俺さ、女の子に真面目に花を贈ったことなんか無くて。でも他に、彼女が喜んでくれそうなもの、思い付かないし」
「折角告白するのに、手ぶらじゃ何だか格好が付きそうにないし」
「だから君に、女の子が喜びそうな花束を、見繕って欲しいんだ」
そう説明してくれる彼は含羞を帯びた熱を目許にほんのり灯していて、女の子にモテる事に慣れているだろうに、今だけはずいぶん初々しく見えた。
それだけに、彼が本気でその彼女に想いを向けているんだろうって事が伝わってきて、とても微笑ましい。