あなたにキスの花束を
司さんは何も言わずにその眼鏡を掛け、折角綺麗に整えられた髪糸に指を入れて、くしゃくしゃと掻き回した。
寝起きみたいな感じの乱れたヘアーになる。
「これでどうだ」
告げた彼は、開き直ったようにその寝起き頭の眼鏡姿で私を見下ろした。
あれ。
あれ、あれ、あれれ。
脳裏にぴんと閃くその人の姿と名前。
「片桐(かたぎり)さんじゃないですかー!!」
思わず指を差して叫んでしまった。
だって私は思い出したのだ。彼は、うちの眼鏡店のお得意様だ。