あなたにキスの花束を


今掛けているセルフレームはもうメーカーの方では生産が終了している。
けれど彼はその形がとても気に入っているらしく、何度も部品をお取り寄せしたり、形が歪んだら型直ししたりなどの修理もさせてもらっている。

その黒セルフレームと言えば、私の中では片桐さんなのだ。

でもちょっと待って欲しい。彼は司さんだ。



「司さんて、偽名だったんですか?」

「本名です」

「でも片桐さんですよね?」

「片桐司です」

「……」



やらかしたーーーーー!!

司さんて苗字なのかと思ってた。
つまり私は、眼鏡を掛けていない彼をお得意様の片桐さんだと気付けずに、今まで一緒に居た訳か。

眼鏡を見てその人を認識する悪い癖が、こんな所で最悪の形で…!

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