二人の未知~X'mas短編ストーリー~


奈美は冷えきったトオルの身体を部屋に押し入れると暖房を入れ、手土産のプリンを冷蔵庫にしまう



「お茶入れる前にちょっと着替えるから待ってて」


奈美はそう言って寝室に行った


トオルは何度となく自分が泊まった部屋を眺める‥


自分のモノは一切置いてない‥‥
キレイさっぱり処分されていた‥



歯ブラシや男物のカミソリ‥
ちょっとは期待してたのに……



新しい一歩を踏み出した奈美と──

新しい一歩を踏み出した部屋………



なんだか切なさが込み上げてくる…


やり直したいのは俺だけ。





着替えを済ませコーヒーを入れてくれてる奈美の後ろ姿をトオルは見つめていた



「何かあった?」


コーヒーを差し出しながら奈美はトオルの顔を覗く

「ん‥‥ちょっとな‥」


トオルは自分を見つめる奈美を見つめ返す‥


思えばコイツの顔をこんなに見たのは初めてかもしれない‥


キレイな卵型の顔に、まつ毛も結構長い…
案外可愛い顔をしてたんだな……


「どうしたの? 大丈夫?」


「え!?
ああ‥うん、大丈夫」


奈美は自分を見つめたままのトオルに話しかけた


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