正しい紳士の愛し方
「かもな。でも、俺にとってパーティーよりも樹ちゃんが大事だったんだから仕方ない。本当に無事で良かった」
全然、良くなんかない。
安堵した声も優しい言葉もアタシをどんどん狂わせる。
抑え込んでいる心の蓋がカタカタ言ってる。
お願いだから、アタシの心に優しく触れないで……!
「なんで……なんでそんな風に言うの?お前のせいで予定が台無しだって言えばいいじゃん……」
「そんなことは思ってない」
「じゃあ、パーティーに行かない理由にアタシを使ったんだ?
行かなければ大好きな百合さんの幸せな姿を見せつけられずに済むと思って……」
「何のことだよ……。樹ちゃん、ちょっと落ち着いて話そう」
さすがの彼も困惑気味。
まぁまぁ……と肩に乗せられた手を、樹はパッと払った。
「ずっと正気だよ。アタシは大和さんのこと何にも知らないとか思ってる?ちゃんと知ってるよ。
百合さんと再会した夜はちょっと様子がおかしかったし、寝言で懇願しちゃうほど彼女に結婚してほしくないと思ってることも……。
あの日、アタシとさえいなければ、ちゃんと気持ち伝えて、心の整理して、今夜のパーティーで“おめでとう”って言うはずだったんだよね。そうでしょ……」
樹は息継ぎもろくにせず畳みかけて言う。
結局、こうなっちゃうんだ。
カッコ良く恋の幕引きもできない。
大和さんとは全然ちがう。
だから、未だに立ち位置が変わらないんだ。
彼だってきっと呆れてる。
まぁ、出会った頃から考えれば醜態(しゅうたい)さらしたのなんて初めてじゃないけど……