エリート上司に翻弄されてます!
「何先輩?」
「あ、乾先輩……」
「……」
一瞬だけ彼が私の顔を見て固まった。
今1番乾先輩のことを知ってるのは日高さんだと思うから、会社での彼の様子を聞くならこの人しかいない。
でも前から気になっていたけど、私が乾先輩の話をすると彼はいつも一瞬だけ動きが止まる。
日高さんはコピーを再開させると、
「別に、普段通りウザいよ」
「良かったです」
「そんなに気になるなら家帰れば?」
「っ……」
固まってないで働け、と彼はコピーした資料で私の頭を叩くと自分のデスクへと戻って行った。
家にはもう戻ってるって言い忘れた。まぁ日高さんは興味ないかもだけど。
告白される前は会社と変わらない、普段の乾先輩だと思った。
家を出てから彼は私のことが好きなんだと自覚した。
家に帰ってきてから、彼の気持ちが分からなくなった。
乾先輩は私のことを今どう思って一緒に暮らしているんだろう。
好きだという気持ちを押し込めているのか、それとも無くそうとしているのか。
私はこのままの状態でいていいのかな。
「(話す勇気すらない……)」
今の関係に依存して、離れられない。