そこには、君が






「僕もこれ以上大きくしたくないからね」





ほら。


そう言いながら偉そうな態度を、


見ていられない。


何て言ってやろう。


そんなことを考えていると。






「おお、すまんな」





大和はその手を取った。


仲直りのつもりなのか、


黒田くんは大和の手を引く。







「まあ、永森くん。これから気をつけて…、」





「あ?」





聞き覚えのある、大和のキレた声。


そして。






「調子に乗んじゃねえクソが!」





大和は黒田くんの手を自分に引くと、


思いっきり頬を殴った。


油断していた黒田くんは、


受け身も取れず、そのまま一撃を


正面から食らっていた。






「ったく、馬鹿も休み休みやれや」





大和は倒れ込んだ黒田くんを見て、


笑った。






「お前、そんなんだから女取られんじゃねえの?」






「なっ…永森!!お前っ、良くも…!」






黒田くんは殴られた頬を抑えて、


わなわなと震えている。






「明香、大丈夫か?」






「あ、うん。私は平気、」






すると大和は私をまじまじと見つめ、


かけてくれたブレザーを両手で掴んだ。






「絶景だな、これ」






「ん?…あ、ちょっと。何がっ、」





大和は指一本伸ばしてくると、


肌に引っ付いたシャツの上から


私の肌をなぞる。


冷たい感覚と、大和の手の感触に、


少し反応してしまう。






「やべえ、脱がしてえ」





「は?何言って…ん、のっ、あっ…ばか、」






大和は急にキスをし、


そのまま顔を私の胸に近付けて、


シャツの上から口でなぞる。


いつもと違う感覚に、


気持ちよさを感じてしまった私は、


抑えているつもりだったが、


少し声が漏れてしまった。







「や、ま…見てる、から、」





「あ?あー、黒田。お前まだいたのか」






さっき殴られた黒田くんは、


私たちをじっと見て、


悔しそうに唇を噛んでいる。






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