そこには、君が
「それにしても、君の彼氏くんは守ることも出来ないんだね〜」
「あの、」
「頼りなさすぎでしょ。君がこんな目に遭ってるのにさ」
もう我慢の限界だった。
「いい加減にしてくれます?」
自分でも思ったより低い声が出て、
体がブルブルと震える。
「どういうつもりなのか知りませんが、あなたじゃ大和に敵いませんよ」
大和にどれだけ恨みがあるのか知らないけど、
この人がどんだけ頑張っても、
大和に敵うわけがない。
「いや〜、君も頭悪くなっちゃったのかな?」
「…はい?」
「まあ頭のおかしい同士、お似合いだとは思うけどね」
頭がおかしいとか、
そんなの痛くも痒くもない。
だけど、こいつの好きにさせるのが、
許せない。
「本当、いい加減に…っ、」
腹が立って掴みかかる寸前。
後ろから。
「黒田!」
大和の声が聞こえた。
私は慌てて振り向くと、
大和は私のすぐ側まで来ていて、
肩に自分のブレザーをかけてくれる。
「こんな所にいたのか」
「何で、ここ…」
すると大和は、
見とけと言って黒田くんを真っ直ぐ見つめる。
そして突然しゃがみ込むと、
地面に膝を付き、頭を下げ、
土下座をした。
「お前が嫌な思いをしたなら謝る」
そう言いながら頭を下げ、
沈黙を守った。
この大和が、他人に頭を下げている。
そんなことをさせているのは、
私のせいなのかもしれない。
「大和…っ、」
「棚橋さん、見てみなよ。これが君の好きな彼氏くんの姿だ」
はははははははっ!
高笑いは、続く。
薄気味悪い顔を浮かべて、
指を刺して。
「永森くんも、こんな軽そうな女のために、土下座までして滑稽だね」
黒田くんはそう言いながら、
大和に近付く。
そしてあろうことか手を差し出し。
「まあ、そこまでするなら許してやらんこともないな」
すっごく上から目線な発言しながら、
握手を求めた。