白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「無駄だ」

「きゃあああっ!」

誰かに思いきり身体を押され、私は後ろへひっくり返った。ガツンと後頭部に衝撃が走る。

ああ、白鷺……どうか無事でいて。

私はそのままスウッと意識を失った。

◇◇◇◇◇◇◇◇



「柚菜、柚菜!」

パチパチと頬を叩かれる感覚に、私は眉を寄せて恐る恐る眼をあけた。

すぐ前に白鷺がいて、その後ろには宗太郎が見える。

「白鷺」

ああ、白鷺も宗太郎も無事みたいだ。

「白鷺、良かった、無事みたいで」

白鷺は私がそう言うと、

「怪我をしてるのはお前だ」

言うなり私を抱き締めた。

逞しい白鷺の身体が私に密着して、たちまちドキドキと心臓が騒ぎ出す。

「あの、白鷺」

「俺は仁さんに傷薬を分けてもらってくる」

言うなり宗太郎は身を翻して出ていってしまい、後には私を抱き締める白鷺が残った。

ど、どうしよう。

白鷺に抱き締められるのは嬉しいけど……。

てゆーか、私が怪我?

戸惑う私から白鷺は僅かに身を離し、私の左の頬を覗き込んだ。
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