白鷺の剣~ハクロノツルギ~
「柚菜……宗太郎に言伝てを頼む。今日は来なくていいと」

グーッと喉の奥が重くなって痛かった。

止められなかった、白鷺を。

絶望に押し潰されそうになり、私はこの場にいるのに耐えきれず、身を翻すと駆け出した。

白鷺は雅さんを抱くんだ。

そこに愛がなかったとしても、今から彼女の頼みを叶えるのだ。

グシャグシャと胸を潰されるような痛みに、頬が歪む。

沸き上がる涙のせいで砂利道がぼやけ、私は派手に転倒した。

唇が痺れて口の中でジャリッと嫌な感覚がしたけど、そんな事はどうでもよかった。

「白鷺……っ、白鷺」

届かないと分かっていながら、私は白鷺を呼ばずにはいられなかった。

心が痛くて苦しくて、身体が裂けてしまいそうだった。

白鷺は何を秘めているの?

どうして雅さんは生き霊になって白鷺を苦しめるの?

こんな頼りない私は白鷺を救えるの?

これから先が怖くて不安で、私は声をあげて泣き続けた。
< 166 / 197 >

この作品をシェア

pagetop