そこにいた

「じゃあ、胸の音を聞くから、服を上げてね。」





そういわれ先生に言われた言葉をもう一度頭の中で繰り返し、いつもより鈍ってる頭で理解し、服を上げた。







「大きく深呼吸してね。」






「スーッ」






痛っ!!!






「フ、フー。」






「もう一度。」






「スーッ、フー。」






痛い。息をするとき激痛が走る。







真剣な眼差しの亮先生を見ていると、痛みがバレるんじゃないかと思うと目を反らした。






背中も終わり、次は喉とリンパを触られた。






亮先生の温かい手が私の顔を包む。
  





怠さがどんどん増して、目を開けるのがやっとだった。






「これから血液検査とレントゲンを撮って、結果を待っている間に点滴しようか?」






え?血液検査にレントゲン?






それって、ただの風邪じゃないよね。






「あ、あの、帰って勉強したいから、風邪薬下さい。





もらったら帰ります。」






そういうと亮先生は困った顔をして、






「まだ帰せないよ。検査してから。






それに、その体じゃ、帰って勉強は出来ないと思うよ。」







それは、私でも分かります・・・・・・。






私は亮先生の前でうなだれるように座っていると、亮先生が立ち上がり、診察室の裏の方へ歩いていった。






先生はどこに行ったのか、今の私には考えられない。






前後にふらふらしながら座っていると、看護師さんが背中を支えてくれた。





やっぱり素敵な仕事だな。看護師さんは。






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