そこにいた
夜中を過ぎた頃、とうとう船を漕ぐようにウトウトしていた。
眠りに落ちる手前で傷が痛む。
忘れた頃に傷が痛む。
そして、朝になると疲れて眠っていたようだ。
回診に来た亮先生と看護師さんに声をかけられて目を覚ました。
昨日のことがあって、私は先生とは反対を向く。
傷口の消毒が始まった。
亮先生がやるの?
手術が終われば、外科でなく内科の先生が行うなんて、知らなかった。
服が広げられ、ガーゼが剥がされる。
あれ?消毒液がまだかかってないのに、何か垂れてる。
「綾ちゃん、傷口が全部開いてる。
昨晩は痛かったんじゃない?」
「・・・・・・。」
「今から軽く麻酔をして、傷を縫うけど、いい?」
「・・・・・・。」
「武田先生も呼んで来てください。」
亮先生が付き添いの看護師に指示する。
「・・・・・・昨日綾ちゃんが言った言葉。
本心じゃないって信じてる。
僕にとって綾ちゃんは、すごく大事な存在。
だから、どうでもいいなんて言わないで。
お願いだから。」
突然の言葉に、そっぽを向いていてもどう反応したらいいのか分からなかった。