かわいいあなたにマフラーを
「静谷っ!」

腕を掴むと、真っ赤な顔で俯く彼女がいた。

「笹野君……。離して……?」

「離さない。逃げるだろ?」

「に、逃げない、から……。
靴を、履き替えさせて?」

俺は、顔をあげた彼女の瞳を見つめて、手を離した。
一緒に靴を履き替えて、校舎に入る。

「話したい、静谷」

「あ、わ、わたしも、だよ……?」

俺の隣を歩く彼女には、いつもの朗らかな笑顔がなかった。

俺が、そうさせているの?
それとも、昨日見た男?

「行こう」

「え? これからホームルーム……
って、え?」

俺は再度静谷の腕を掴んで、空き教室に入った。


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