あたしはそれでもアキが好き
☆☆☆

どうして?


なんで?


そう言って引き止められたらよかったのかもしれない。


あたしはそれをせずにセアキの背中を見送ったのは、アキが何を考えているのか少しだけわかっていたからだった。


アキがいなくなった交差点で茫然と立ち止まったまま、あたしは勉強した知識を思い出していた。


『半陰陽の人は子孫を残す事ができない場合もある……』


「アキ……」


あたしがアキの名前を呼んだのはアキがいなくなって30分も経ってからの事だった。


「アキ……! アキ……!」


アキを追いかけて走る。


だけど足が絡まって転び、膝をすりむいて血が流れて来た。


もし、万が一。


アキがそんな事まで考えてあたしを振ったのだとしたら……?


アキは最初から、この夏休み中だけ付き合うと決めていたのかもしれない。


そんな決意をしているアキを追いかけて、あたしに一体何ができるんだろう。


自分の体と好きな人の幸せを天秤にかけているアキに、あたしが何を言えるって言うんだろう。


涙は次から次へと溢れ出し、あたしはそこから立ち上がることもできずにひたすら声を上げて泣いたのだった。
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