♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
「ヒントぐらい、もうすぐ礼士の家に届く予定になってるから、焦るなって!」
「えっ⁉︎」
「何、鳩が豆鉄砲食らったような顔してんだよ。
あいつ昨日言ってただろ。ネットで取り寄せようかなって」
「そう言われれば、そうだったわね」
「でもな乙女座。あれは確かにでかいヒントだけれども、もっとお前達が知らないといけない大切な事がある。
それは…」
さっきまでと打って変わって、ひどく真面目な表情で、春子にそう言ったヴァンパイア礼士。
そして突然、ヴァンパイア礼士は春子を正面からギュッと抱きしめて、春子の左耳にこうささやいた。
「月山美加の事をこうした、アイツの気持ちだ」
「えっ…」
春子は、訳のわからないまま、ヴァンパイア礼士に、自分の額に優しくキスをされていた。
たった一秒半の、額へのキス。
ただそれは、春子の胸をキュンとさせ、ほおを赤らめさせそして、暖かい気持ちにさせるには十分であった。
春子の身体を離す時もごく自然に、そっと優しく解放したかと思えば、
「頑張れよ」
と一言。そして少し悪戯っぽい表情で春子にウインクして見せた。
それが、ポーッとなったまま固まってしまっている、春子の金縛りを解く合図であるかの様に、へなへなと、春子は両足を崩して地面にへたり込んでしまった。
そしてその日の晩。春子は自宅の居間で、付けっ放しのテレビの前で、今日起きた出来事を思い出していた。
(谷本さんが、たえ子さんに復讐するために、月山さんを犠牲にしようとしているのは確かなんだけれど…)
春子は、ヴァンパイア礼士にキスされた額に右手をそっと当ててみた。
(…でも、同時に月山さんの大会出場も…
もっと言えば、大会の優勝まで願って本気で応援もしている?
演技?いいえ、演技なんかであんなに優しいキスを女の子にできる様な人には見えない。
…やっぱり、何かが変だわ。今回の事件…)
「おい、姉貴!チャンネル変えるぞ!
姉貴も興味あるだろう番組だから、いいだろ?」
「えっ⁉︎…ああ、どうぞ」
不意に弟の達也からそう言われて、少し驚き気味に答えた春子。
変な奴、とでも言わんばかりの視線を投げかけながら達也が変えた番組とは、『奇跡のマジックショー』というものだった。
次々と、テレビの画面を通して繰り広げられる、マジックの数々。
一通り見終わった後で、ふと、春子は番組の感想を述べた。
「まあ、新しいマジックもあったけれど、使い古されたマジックもいくつかあったわね。
…しかも、あの三組目の、でぶっちょとひょろ長い男性二人組。
でぶっちょが不器用すぎて失敗ばかりするものだから、ひょろ長い方がずっと、フォローしていた。
まあ、そこが彼らの持ち味になっているのかも知れないけれど…
ん?な、何よ達也。さっきから私の方をじっと見てニヤニヤして。
気持ち悪いわね!」
「えっ⁉︎」
「何、鳩が豆鉄砲食らったような顔してんだよ。
あいつ昨日言ってただろ。ネットで取り寄せようかなって」
「そう言われれば、そうだったわね」
「でもな乙女座。あれは確かにでかいヒントだけれども、もっとお前達が知らないといけない大切な事がある。
それは…」
さっきまでと打って変わって、ひどく真面目な表情で、春子にそう言ったヴァンパイア礼士。
そして突然、ヴァンパイア礼士は春子を正面からギュッと抱きしめて、春子の左耳にこうささやいた。
「月山美加の事をこうした、アイツの気持ちだ」
「えっ…」
春子は、訳のわからないまま、ヴァンパイア礼士に、自分の額に優しくキスをされていた。
たった一秒半の、額へのキス。
ただそれは、春子の胸をキュンとさせ、ほおを赤らめさせそして、暖かい気持ちにさせるには十分であった。
春子の身体を離す時もごく自然に、そっと優しく解放したかと思えば、
「頑張れよ」
と一言。そして少し悪戯っぽい表情で春子にウインクして見せた。
それが、ポーッとなったまま固まってしまっている、春子の金縛りを解く合図であるかの様に、へなへなと、春子は両足を崩して地面にへたり込んでしまった。
そしてその日の晩。春子は自宅の居間で、付けっ放しのテレビの前で、今日起きた出来事を思い出していた。
(谷本さんが、たえ子さんに復讐するために、月山さんを犠牲にしようとしているのは確かなんだけれど…)
春子は、ヴァンパイア礼士にキスされた額に右手をそっと当ててみた。
(…でも、同時に月山さんの大会出場も…
もっと言えば、大会の優勝まで願って本気で応援もしている?
演技?いいえ、演技なんかであんなに優しいキスを女の子にできる様な人には見えない。
…やっぱり、何かが変だわ。今回の事件…)
「おい、姉貴!チャンネル変えるぞ!
姉貴も興味あるだろう番組だから、いいだろ?」
「えっ⁉︎…ああ、どうぞ」
不意に弟の達也からそう言われて、少し驚き気味に答えた春子。
変な奴、とでも言わんばかりの視線を投げかけながら達也が変えた番組とは、『奇跡のマジックショー』というものだった。
次々と、テレビの画面を通して繰り広げられる、マジックの数々。
一通り見終わった後で、ふと、春子は番組の感想を述べた。
「まあ、新しいマジックもあったけれど、使い古されたマジックもいくつかあったわね。
…しかも、あの三組目の、でぶっちょとひょろ長い男性二人組。
でぶっちょが不器用すぎて失敗ばかりするものだから、ひょろ長い方がずっと、フォローしていた。
まあ、そこが彼らの持ち味になっているのかも知れないけれど…
ん?な、何よ達也。さっきから私の方をじっと見てニヤニヤして。
気持ち悪いわね!」