♀乙女座と吸血奇術師♂~ヴァルゴトマジカルヴァンパイア~③
そう言って春子は、サッと礼士の左腕にしがみつき、

「いつもの、私達の師弟関係みたいに、いい感じで・す・よ・ね♪」

と、上目遣いで礼士を見つめた。

「あわわっ、ちょ、ちょっとハ、ハルちゃん!?」

顔を真っ赤にする礼士。そしてその様子を見て、たまらず吹き出す他のかるた部員達。

その空気に耐えかねた礼士は、とっさに違う話題を持ち出した。

そしてこれが、今後このかるた部に起こる事件の始まりであった。

「あ、あの~っ、と、所で今年は月山さんが選手として今度の大会に出場するけれど、去年ってどうだったんですか?」

何気ない、礼士のその一言。

その言葉を聞いた瞬間、練習に夢中になって、周りの会話が耳に入っていない美加と亮以外のかるた部員達は、先ほどまでの笑い顔から一転、一斉に引きつった顔をして沈黙してしまった。

「あ、あれ?も、もしかして僕、何か気にさわる事言ったかな?」

礼士は慌てた。そしてその礼士の言葉に対して、かるた部の部長で二年生の古賀理恵が答えた。

「あ、いや、そんな事はないわ。

ただ、急な質問だったものだから…

ねえ、みんな?」

他のかるた部員達も、理恵の言葉にただただ、うんうんとうなずいた。

「はあ…」

理恵達の、ぎこちない返答に、礼士の受け答えもぎこちなくなった。

「あっ、そうそう松永さん、安宮君。

そろそろ、部のミーティングが始まるので、悪いけれど今日はここまでと言うことで…」

「えっ!?」

「あ、あの~っ…」

突然、理恵から退出を言い渡された二人。

二人は何か言おうとしたが、すでに理恵は他の部員と何やら話し込んでいて、二人に完全に背を向けてしまっていた。
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