Dear Mr.サイコパス
プロローグ
彼は、自身が異常だとは思ってはいない。彼はそもそも、その精神病質を行動として具現化させるか否かの違いに、大きな差は感じていない。そして、人間の大半は自分と同じ物を抱え生きている。そしてそれは、決して“異常”などではなく、その精神病質を確かに抱えながらも隠して街に溶け込む人の群れがただマジョリティであるだけだ、と。
彼は確信に満ちていた。

かと言って、誰かを相手にその真実を説くこともない。その行為が彼に齎すメリットが皆無であることが何よりの理由だが、それを聞いた人間にその事実を受け入れる勇気がないことも、彼を認める人がいないことも、現在の世の中の「常識」の中ではそちらの方が自然であることを彼は理解している。

人間の定める常識が世界を作っているこの世界に、彼は違和を感じている。

彼は常に疑っている。サイコパシーを持たない人間など、ここには一人もいないのではないか、と。
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