Pathological love
「確かに………この前も社長賞貰ってたしなぁ。」
「あぁ…………あれ部下がミスしたところを相当粘って契約取ったってやつ?」
「マジ格好いいよなぁ………本当に男いないのかな?」
「噂は色々聞くけど…最近のは何だっけ?」
「社長の愛人ってやつ?」
「バーカ、古ぃーよ!今はビアンって噂だろ?」
「ウソッ?!今、そんななってたの?確かにあの色気で男がいないってのは変だもんなぁ~~。てかビアンって、それはそれで興奮しね?」
(全部聞こえてるっつーの!愛人?レズ?勝手なこと言ってるわ。私は誰にも囲われた事なんて無いし………。)
ロッカールームで予備のスーツに着替え、髪をグッとアップにしてヘアクリップで留めた。
ロッカーの扉に付いている小さい鏡を見て、後れ毛をヘアピンで留めていく。
髪がセット出来ない日は纏めるに限る。
見た目のいいヘアクリップを着けてれば、清潔感は出るし手を掛けてる様に見える。
(あ~…取り合えず鍵屋さんに電話しなきゃなぁ…面倒臭い。呼んだ所で直ぐやってくれるのかな?)
早速、鍵屋に電話してみると、直ぐに留守電に切り替わった。
(まだ、始まってないか………後でもう一回掛けてみるか…。)
漸く落ち着いて、デスクに座り今日の打ち合わせの資料の読み返しや社内メールをチェックする。
(小森くんからメール………一件……後はー)
「皆!ちょっと集まってくれー!!」
お昼も差し迫った午前11時、営業一課の赤坂部長の大きな声がフロアに響いた。
(痛っー………、部長声デカ過ぎ…頭に響くんですけど。)
コンタクトの代わりにメガネを掛けていたけど、そのフレームの圧迫でさえ今は煩わしい。
(頭痛が酷すぎて無理………打ち合わせ行くまで外しとこう。)
「今日から新たに我が社に新設した、デザイン部の全てを取り纏めてくれる秋山くんだ。留学経験もあるし、デザイン業界では名も通っている。今回、我が社に出向という形で契約する事になった。秋山くんの個人事務所と行ったり来たりになると思うが、こちらに居る時はどんどんコミュニケーションを取って、より良い仕事に繋げる様に!!」
「はい!」