Pathological love

会社のエントランスからロビーにかけて、ピンヒールを鳴らして速足で歩く。

これは私が営業成績No.1になった時から続けているルーティーンだ。

女を武器にはしたくないって言う女性の気持ちも分かるし、私もどちらかと言えばその考えに賛成だ。

でも、営業とは時に形振りかまっていられない時がある。

そんな時、私にとってパリッとしたタイトなスーツと9cmのハイヒールは男と張り合える立派な戦闘服になる。

身なりをきちんとし、女らしさも忘れず残す、すると男の人はどんな人でも大体が好感を持ってくれるのだ。

だから女だからこそ、それくらいの武器は使ってもいいと私は思う。

印象も良くしておけば交渉も上手く行くし、最初は見た目でも、完璧にこなせばいずれは一目おいてくれる。

私はそうやって仕事と人脈を築いてきた。


ところが今日はどうだろう………髪はボサボサ、化粧は殆ど落ちて、ピアスも片方無くしている。

とどめが昨日と同じスーツだ………。

ブラウスの胸元を安ピンで留めて、明らかに完璧朝帰りスタイル………………。


(早く………早く替えのスーツに着替えなきゃ!!)


足早にロッカールームに急いだ。






「おっ!営業一課の水川主任だ!今日もいいなぁ………。いつもより無造作な髪型がセクシーだし。」


「てゆうか、一度でいいからあのヒールに踏まれたい…………。」


「ははっ!お前ドM?無理だって…そこらの男じゃ太刀打ち出来ないよ。仕事はかなりの男前だからな。またそのうち昇進するらしいぞ?」


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