Pathological love
「私はファッションブランドBIJOUの代表取締をしているの。アラサーアラフィフ向けのブランドを新たに立ち上げている所なんだけど、あなたうちでモデルしてみない?」
「えっ?モデル?!私が?」
突拍子もないスカウトに驚いて言葉に詰まっていると、彼女は私のすぐ近くまで近寄ってクールな笑みを浮かべた。
「あなたいいもの持ってるわ。うちのブランドが似合いそうだし、今回のコンセプトにも丁度いいし、どうかしら?」
「モデルなんて、急に言われましても………」
何とか遠回しに断ろうと試行錯誤していると、見かねた加藤ちゃんが間に入ってくれた。
「秋山代表!此方は間宮印刷の取引先の営業の方ですよ?うちに仕事で来ているんですから、あまり困らせないでください!」
「あら、そうだったの………残念。」
「すいません!水川さん!………それじゃ次の部屋へご案内します。」
上に立つ人特有の強烈な威圧感を残して、慌ただしい一行はあっという間に通り過ぎて行った。
「何だったの………あれ。」
「先輩!!凄いじゃないですか!モデルだなんて!!」
「そんなのプロのモデルと比べられたら惨めになるだけよ………。」
「えぇ~!!そんな事ないのになぁ~…!勿体無い。」
美保ちゃんに茶化されながらも仕事に戻ると、暫くして加藤ちゃんが戻って来た。
「水川さん、さっきはすいませんでした。秋山代表は仕事となると抑えがきかない性分で………ビックリしましたよね?」