2番目じゃなくて、2度目の恋
「水戸さん、恋人はいないって言うけど、好きな人は?」
「……いません」
「最後に付き合ったのはいつ?」
「男の人と付き合ったことは一度もありません」
「誰かを好きになったことは?」
「……一度もありません」
「恋愛しようとは思わないの?」
「望月さんと同じで面倒なんです、私も。恋をするのが」
彼が次々に投げかけてくる質問に、出来るだけ抑揚はつけずに淡々と答えた。
ちゃんと真実に聞こえるように。
嘘だと思われないように。
清純だと思われたくてこう言ってるんじゃない。
私は『あの人』の記憶を消したいだけなのだ。
『あの人』まみれの恋愛歴を無かったことにすると、必然的に私の恋愛経験なんてゼロになってしまった。
私の答えを聞いた彼は、少しばかり思うことがあったらしく頬杖をついたままこちらを見ていた。
外していた視線を彼に戻すと、まだ私を見ているようだった。
「俺と一緒だね」
それだけつぶやいて、また微笑んだ。
さっきと同じような冷めた微笑みを浮かべた彼は、
「だったら半年くらい俺と恋人関係になるのなんて問題無いでしょ。お互い恋愛が面倒なだけで、妙なこだわりもないってことで。こっちの都合で申し訳ないけど」
と勝手に話を進めるのだった。
「それとこれとは話が違うと思いますけど」
「なんで?一緒じゃない?」
「恋愛感情も無いのに付き合うなんておかしいですよ」
もしもこの人が仮初の恋人を探しているんだとしたら、いくらでも他にあてはありそうじゃないか。
私でなければならない理由が見当たらない。