今すぐぎゅっと、だきしめて。


その日の夕方。

家に帰ると、玄関先に見覚えのある人影を見つけた。



「……あ」



夕陽で伸びた影が、あたしの足元でユラユラと揺れてる。



あたしが帰って来たのを見て、その人はこっちに駆け寄ってきた。




「ユイちゃん!」


「ちぃちゃん……」




驚いた。



「ちぃちゃん……その髪……」





真っ黒で

キレイで


艶やかなロング。



それが、あごのラインまで短くカットされていた。





「えへ。 切ったの。似合う?」





そう言って、小首を傾げて微笑んだ。




「似合ってる……
すごく似合ってるけど……どうしたの?」




大人っぽかったちぃちゃんの雰囲気が、さらにプラスアルファされていた。



センターパーツのボブ。

悔しいくらい似合ってて。
垢抜けしてしまっていた。






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