今すぐぎゅっと、だきしめて。
慌てて見上げると、すぐそばにヒロは迫っていて。
あたしを囲うように、両手をベットについた。
「ユイ、試してみない?」
「た…試すって……な、なに……」
息がかかりそうな距離。
ヒロは少しだけあたしを見上げるように、覗き込んだ。
瞬きするたびに揺れる黒い前髪。
長い睫毛。
薄い唇。
もう、生きてて…ほんとにここにいるみたい。
ドキン ドキン
だから心臓に悪いんだって!!!
その顔、あたしに近づけるなーッ!
もう涙目のあたし。
真っ直ぐにあたしを見つめてるその瞳から逃れる術は今のところ見つからない。
そして、ヒロは少しだけ顔を傾けると唇をそっと近づけた。
「ななな…なに…なにを…」
「キス」
ひゃあぁぁぁあッ!!!
ヒロってば、キキ、キ…キスなんてそんな恥ずかしい単語言ってるしッ!
真っ赤になったあたしなんかお構いなしで、冷静で静かなヒロ。
心臓は、全身に血液を送りながら今にも力尽きそうな勢い。
体中は熱いし。
口の中はカラッカラ。
ヒロが言いたい事はわかる。
もしかしたら、あの日の夜した《契約のキス》が何か思い出すきっかけになるかもしれないって。
わかってるよ……
だけど……
だけどッ!
伏目がちのヒロを直視できずに、あたしはギュッと強く瞼を閉じた。