強引上司と過保護な社内恋愛!?
「桧山さん、起きてください」

私は眠っている桧山さんの肩を揺すって起こそうとする。

しかし、熟睡しているのかピクリとも動かない。

「起きないと、また汚い部屋に連れて帰っちゃいますよ」

私は身を屈めて耳元でボソリと呟く。

このままずっと眠っていればいいのに。

そうしたらムカつくことも言わないし、無視もされない。

ずっと私の側に置いておいて、私だけのものに出来るのに。

サラリとした黒髪を指先でそっと撫でてみる。

「…いずみ?」

桧山さんは重たそうにゆっくり瞼を開く。

私は慌てて手をひっこめる。

揺すっても起きなかったくせに、なんでこのタイミングで目覚めるのよ!

寝込みを狙って悪戯をしようとしていたと疑われたらどうしよう。

桧山さんは何度か瞬きをすると、手の甲で目をこすりながらヨロヨロと上半身を起こす。

「珍しいですね。ちゃんと起きるなんて」

「だって、汚い家に連れ込まれたら困るから」

この人…起きてた?!

私の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

その様子を見て桧山さんは可笑しそうにクスクス笑った。

久しぶりだ…笑顔を見たの。

からかわれているはずなのに、つられて私の頬も緩んできてしまう。

「あ…あの!」

レセプションの晩の事を謝ろうと、声を掛けたその時だった。
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