強引上司と過保護な社内恋愛!?
「田母神(たもがみ)さん、いいかな?」

部長に肩を叩かれた。

隣のデスクに座るウッカリ屋の後輩佐伯さんがギョッと目を見開いて此方を見つめている。


本日は半期に一度の社内異動の内示日。

対象者が順繰りに肩を叩かれては会議室に連れいかれ、部長から異動の宣告を受ける。


遂に…来たか。

私は努めて冷静を装い「解りました」と言って席を立つ。


フロア会議室に部長と向き合って座る。

「田母神さんは10月1日付けで営業本部へ異動です!」

何故か部長が張り切って言う。

しかし、まさかの営業本部とな!

「承知致しました」

意外過ぎる異動先に内心動揺しまくりだけど、顔には出さない。

30にもなって「ええ!そんなあ!無理ですう!」と目をウルウルさせていったら、温厚な部長ですら軽く殺意を覚えるだろう。

「資材管理部としてもミスパーフェクトを失うのはかなり痛手になるけど、あちらの部長から是非とも田母神さんが欲しい!と強い要望があってねえ」

今年50の大台に乗る部長はワザとらしく渋い表情を作ってみせる。

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