without you
・・・お風呂場も異常なし。よかった・・・。
幸い、家の中に誰かが侵入した形跡は、どこにもない。
私は、フーッと安堵の息を吐くと、手に持っていた包丁をキッチンに戻して、リビングのカーテンを少し開けた。
誰もここを見張ってはいないようだ。

いつもなら、ここでカーテンは全開にするところだけど、今日はやめておいた。
食欲もないし、料理をする気力もないから、朝ごはんは食べなくていい・・・あっ。
そういえば今日は、社長から朝ごはんをリクエストされてた・・・。

「・・・ぅ。しゃ、ちょう・・・・・・」

その場にペタンと座り込んだ私は、最初、次から次へと流れ出る涙を、両手で拭っていたけど、途中でやめた。
いくら拭っても、何度拭っても、涙は止まらないから。

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