without you
この人のことが、とても・・・とても愛おしい。
私は、穏やかな笑顔を浮かべて彼を仰ぎ見た。

「私、“彼女”は捨てません。私の大事な癒し友だちだし。何よりあなたからのプレゼントだから」
「じゃあ、“彼女”は、俺らの子どもたちに受け継がせよう」
「なっ、なんで話がそこまで飛ぶの!?」
「飛び過ぎたか」
「飛び過ぎだし、早すぎ・・でしょ」
「うーん・・ま、そーだな。それよりおまえは、本当にこっちでいいのか?まだ俺んちにいてもいいんだぞ」
「もうあいつから逃げなくてもいいから。自分の家に帰ります。本当に、いろいろとありがとうございました」
「ああ。また明日」
「明日は私・・」
「分かってるよ。とにかく、家着いたら電話してもいいか」
「あ・・はい」

純世さんは「あいつに関係なく、戸締りはしっかりしとけよ」と言うと、私の唇にキスをして、家を出て行った。

なんか、さっきのキスは・・・微妙に長かった。
ジンと熱く疼く唇をそっと指で押さえながら、私は玄関のドアに鍵をかけた。

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