without you
「だからか」
「・・・何が」
「おまえは6年もストーカーから逃げ回っていたんだぞ。肉体的に、そして精神的にも。突然“解決した”と言われても実感はわかないってのは当然の反応だ。もし俺がおまえの立場なら、いくらその道のプロや俺が“大丈夫だ”と言っても、心のどこかでまだ安心できねえ。だからおまえがそう思うのも当然、というより自然な反応だ」
「あ・・・」
「おまえの心の中にはまだ恐怖心が残ってる。だからナイトメアを見てうなされるんだ。おまえの中ではまだ解決しきれてねえんだよ。そんな姿を俺に見せたくない。おまえは“みっともない”と思ってる。だからおまえは、俺と一緒に一晩過ごしたくねえんだろ?あまり眠れないことを知られたり、うなされる姿を俺に見られるのが怖いから」

・・・見透かされてる。全て。
それが、嬉しくて。
同時に情けなくて。
私は、純世さんから顔をそむけた。
その拍子に、私の右目から、涙がスッと流れ出た。

純世さんは、そんな私を慈しむように、私の髪を優しく撫でると、太い指で涙を拭ってくれた。

「人には誰にも踏み込まれたくない心の領域ってのがある。だが、ここは俺と分かち合おう。“愛”はきれい事だけじゃないんだ。表面だけ繕った見せかけのイイとこだけを俺に見せようとするな。俺をもっと信頼したければ、おまえは全てをさらけ出せ。俺と一緒に愛を育てよう。俺たちの愛を」

・・・この人は信頼できる、いや、もっと信頼したい。
私の人生をかけて。
と思うようになったのは、皮肉にも、私に執着していた元カレ(あいつ)のおかげとも言える・・・だろう。

純世さんにそう言ってもらって嬉しい気持ちも含めて、いろんな気持ちが私の中で交差して。
両手で顔を覆って、しくしく泣き始めた私を、純世さんはそっと抱きしめて。
時にはあやすように、私のこめかみにキスをしてくれながら、泣きたいだけ私を泣かせてくれた。

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