without you
「あみかさんやさくらさんの警護は、チーム寺井のみなさんにお任せして、あなたはあなたにしかできない仕事を、いつものように全力でやってください」
「・・・そうだな」

あみかがいなくて寂しいという想いは、もちろん俺の中にある。
だが、あみかが妹やご両親のところへ行くことに、少々心配してもいると、運転手(ショーファー)の江上は分かっている。
なんてったって江上とは、俺が子どもの頃からのつき合いだからな。

ストーカーの心理というのは、いまだに、いや、恐らく永遠に、俺には理解できないが、吉見(ヤツ)は最初、あみかと別れて半年後に、表立ってあみかを攻撃してきた。
それから5年以上経って再び。
ヤツは海外赴任していたから、あみかをつけ回すことができなかった、という理由はある。
だが、気になるのはそれだけじゃない。
あみかから話を聞いた限り、ヤツは、忘れた頃にやってくる、狡猾で執念深い男だと思う。
よって、吉見がまた、あみかをつけ回し始める可能性は、非常に高い。
という俺の意見は、トラブル解決のスペシャリストであるテラさんとも一致している。
だから俺は、チーム寺井のメンバーに、引き続きあみかの護衛を頼んでるが、彼女にはまだ、このことを話してない。
あみかはもう十分過ぎる程、余計な心配をしてきたんだ。
今は、「もう終わったんだ」という安堵感に浸ってほしい。
と思っていた俺だが・・・。
あみかがやっと俺と同棲することに同意してくれた後、俺は彼女にそのことを話した。

< 616 / 636 >

この作品をシェア

pagetop