without you
番外~社長のつぶやき~編 (久遠純世視点)
ストーカー野郎・吉見から解放されて以来、あみかは横浜に住んでいるご両親のところへ、2週に1度の割合で、週末を利用して遊びに行っている。
甲府に住んでいるあみかの妹・さくらは、看護師(ナース)をしていることもあり、休みが不規則なため、あみかが仕事を休んで、平日の今日、訪ねに行ったというわけだ。
俺が今日、何度目か(数えることには興味ない)のため息をついたのは、それが理由だ。
あみかが仕事を休むことが、気に入らないんじゃない。
今のあみかには、意図的に連絡を絶っていた家族と、空白の6年を埋める必要がある。
だからこそ俺は、仕事を休むことをかなり渋っていたあみかに、(仕事を)休んでいいからさくらのところへ行って来いと言ったんだ。
だが、と思いながら、俺はまた、ため息をついた。

「純世(じゅんせい)さん。またため息ですか」
「しょーがねえだろ。今日はあみか、休みなんだ。あぁ分かってるよ。自分で送り出したくせに、そんなことじゃあ、あみかのボーイフレンドとして心が狭いって。だが・・・うー、やっぱダメだぁ!あみかがいねえと仕事のモチベーションが下がる!」
「でも純世さんは、いつもあみかさんの姿を見ながら仕事をされてるわけじゃないでしょう?海外へ出張していることもあるんだし」
「わーってるよ!物理的な距離が問題じゃねえんだ。たとえ俺が出かけていても、海外へ行ってても、あみかが俺の留守をしっかり護って、サポートしてくれてるのが、俺にとっては当たり前って感覚になってたからさ。ちょっとな、寂しいっつーか」
「あなたのサポートをしているのは、あみかさんだけではありませんよ、社長」
「分かってるよ。社員の連中や江上、おまえも、俺のサポートをしてくれるって。ありがたいな」と俺が言うと、運転中の江上が、心得てますと言わんばかりにスマイルを浮かべた顔が、ミラー越しに見えた。

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