without you
・・・重い。
と思いながら、私はポコンと突き出た自分のおなかをじっと見た。
私のおなかの中で、一つの命が育っている。
まだ見えないけれど、毎日少しずつ、そして確実におなかが大きくなっていくのが、その証拠。
そうして、腿だって胸だって、とにかく体全体に脂肪がついていくのは、胎内で育っている赤ちゃんを護るため、なのだろう。
とても神秘的。
でも、現実的には体は重いし、日々動きづらくなってきている。
大変、という表現がピッタリだ。
それでも私は、その“重さ”にまで、幸せを感じていた。



妊娠8ヶ月に入って、私は一つの決断をした。
それは、「チーム寺井」のみなさんに、ずっと私を護衛することを、止めてもらうことだ。
このことは以前から考えていた。
吉見はもう私をつけ回してはいないと、寺井さんから報告を受けているし、私自身、あいつにつけ回されているという実感もない。
寺井さんたちの「警告」を受けて、あいつはきっぱり、私から手を引いたのだ。
だから、そろそろ普通の生活に戻りたい。
特別に護衛される必要のない、誰からもプライバシーを侵害されない、そんな“普通”の環境で、赤ちゃんを産みたい。
そんな私の想いを、純世さんと寺井さん、そしてチーム寺井のみなさんは、快く理解してくれた。

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